助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

正妃ジェナ

(お城の中って、こんなにも静かなものなのね……)

 国王の居室に立ち入りを許されたのは、ラルドリスと、その従弟であるシーベルのみ。メルは警護の兵が守る扉の近くで、ボルドフと共に謁見が終わるのを待つ。

「すまぬな、息が詰まるだろう」
「えっ、いえ……」

 一瞬なんのことを、と思うが、恐らく城の雰囲気がよくないことを言っているのだ。
 困った顔をしたメルに、ボルドフは哀愁の漂う顔でじっと、居室を見つめた。

「王が病に臥されてから、ずっとこうなのだ。臣下の誰もが、国の先行きを憂い、気持ちを沈ませておる」

 話しかけてくれたことでなんとなく気分は紛れたが、彼とは会ったばかりで話す話題に迷うと、メルはあの扉の向こうで病と闘っている国王――ラルドリスの父について尋ねた。

「モゼウ伯爵……いったい陛下は、どんな御方だったのかお聞きしてよろしいですか?」
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