助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「ボルドフで構わんよ、そうさな……」

 すると彼は意外そうに眉を上げ、彼の知る範囲で国王の人物像を話してくれる。

「強い志を持ったお方であったな。彼が生まれた時は、この大陸では一小国にしか過ぎず、権威を持たなかったこの国を大きくしようと、若い頃から必死であった。国を栄えさせれば、周辺国からの無茶な要求や侵略にも対抗できると、寝る間も惜しみ政務に励んでいた」

 どこまでが国王の裁量で、どこからが各領主の裁量にに任せられるのかメルには分からないが、おそらく手を入れようとすれば、そして優秀であればあるほどに、すべきことは無限にあるのだろう。

「よく言っておったよ、『私は王となるべく生まれた。だからこの身を国に捧げるのは、当たり前のことなのだ』と。そういう人物には感化されるものだ。我々もまた、彼を盛り立てようと一丸となって仕事に励むことができだ。あの頃は本当に充実し、城内にも活気が溢れていた……しかし」

 その頃から、ずっと彼を支えてきたのだろうか、ボルドフは目を細め、眉間に皺を重ねた。
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