助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 わずかなりとも気持ちに寄り添えればと話しかけたメルに、ラルドリスは珍しい苦笑で応える。

「残念ながら、生きているのが不思議なくらいだったよ。少し……後悔している。もっと早く俺が、自分と向き合えていたならば……。父とはちゃんと話してみたかったな。彼がどんな未来を思い描いていたのかを聞かずにいたのが……それを引き継いでやれないとしたら、残念だ」

 友として、悲しむラルドリスを励ましてやりたい、その一心でメルは一生懸命言葉を探し、彼に語り掛ける。

「あなたのお父様は生涯をかけて、一生懸命この国に、多くの希望の種を蒔いてくれたんだと思います。それは多分、ボルドフ様や、近くにいた周りの人々がよく知っているはずです……よね?」
「……む、そうだな。その通りだ。あの方のお姿は忘れようとしても忘れられぬ」

 突然言葉を振られたボルドフも、上手く話しを合わせてくれた。

「なら、きっと大丈夫です。お父様のやりたかったことは皆が覚えていますから。ラルドリス様はこれから、多くの人々と話し、味方を作られる。その過程がきっと、お父様の願いを知る道標になることでしょう」
「そうかもしれないな……」
< 221 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop