助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね


 正妃が捕らえられている貴人専用の牢は、王城の北側に突き立つ高い尖塔にある。
 その最上階の、鉄格子に出入り口をを遮られた広い部屋の奥で……。
 無事に過ごしている母の姿を目にして、ラルドリスは駆けていった。

「母上……!」
「ラルドリス!? ……戻って来てくれたのですか」

 正妃ジェナはラルドリスに似た髪と目の色をした、とても美しい女性だ。眉を下げ、控えめに笑むその顔立ちからは、穏やかな性質が感じられる。彼女は座っていた椅子から立ち上がると格子の奥から手を伸ばし、息子の頬を撫でた。

「ごめんなさいね。こういったことにならないよう、あなたを遠ざけようとしたのだけれど……」
「いいえ! あなたが謝ることなど一切ない! 悪いのは、罪をでっちあげ、あなたに着せたあいつらだっ! ボルドフ、母上をここから出してやることは出来ないのか!?」

 悔し気に格子を握りしめたラルドリスに、帯同していたボルドフは首を振る。
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