助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「申し訳ありませんが、御命令だとしても聞くことはできませぬ。いかに偽の罪である可能性があったとしても、正式に司法にて下された判断です。覆すには、それなりの証拠と手順が必要となるでしょう」
「姉上、御不自由をおかけして申し訳ありません」

 彼女の年の離れた弟であるシーベルも、済まなそうに頭を下げた。

「シーベル……私のことはいいの。でもね、手紙にも書いたでしょう? できれば、この子を二度とこの城へ戻さないでほしかったのだけど……?」
「重ね重ねお詫びいたします」

 自らが原因とは言え、強く望みを伝えていたのだろう。ジェナの悲しそうな目がシーベルを見つめ、ラルドリスが彼を庇った。

「いいや、責めないでやってください。ここに来たのはすべて俺の意思です。母上に産み育ててもらった恩を返し、ザハールとティーラを罰する。そして、俺はこの国を継ぎます! 他ならぬ自分自身でそうすると決めたのです」
「ラルドリス……。強い目を、するようになったのね。陛下と少しだけ似て来たわ」
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