助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
ジェナは痛ましそうにラルドリスを見つめた。
「こんな風に産んでしまったのは私だから、あなたには出来れば自由な選択を選ばせてあげたかったの。陛下は……ターロフ様は辛そうなのに、いつも無理をして笑っていたから。私には倒れてしまうまで、あの方の本当の姿を、弱い部分見せて貰うことが出来なかった。あの方だって、王としてではなく……ただひとりの人間として悲しみや喜びを打ち明けたい時だってあったはずなのに。あなたにはそんな風になって欲しくはないの」
ジェナはラルドリスが玉座を継ごうとすることを、あまりよく思っていないようだ。
しかし、彼は懸命に母に自分の気持ちを伝えた。
「母上……ほんの短い旅だったけれど、俺は城にたどり着くまでに、連れて来てくれた彼らに多くの経験をさせてもらったんです。世の中の人たちがなにを想い、どういうことをして、どれだけ日々を懸命に生きているのか。ここで行われている政務が、多くの人々のためにある、どれだけ大切で誇らしい仕事なのかを」
(ラルドリス様……)
少し下がったところでそれを見つめながらメルは、脇目も振らず真剣に息子の言葉を聞く、母の姿を見ていた。
きっと彼女はラルドリスの幸せだけを願い、この何事も自由にはままならない宮廷で来る日も来る日もどうすればいいかを悩んだのではないか。もしかしたら,王弟の娘として彼女自身も、長く城に囚われ自由を望んだ時期があったのかもしれない。
「こんな風に産んでしまったのは私だから、あなたには出来れば自由な選択を選ばせてあげたかったの。陛下は……ターロフ様は辛そうなのに、いつも無理をして笑っていたから。私には倒れてしまうまで、あの方の本当の姿を、弱い部分見せて貰うことが出来なかった。あの方だって、王としてではなく……ただひとりの人間として悲しみや喜びを打ち明けたい時だってあったはずなのに。あなたにはそんな風になって欲しくはないの」
ジェナはラルドリスが玉座を継ごうとすることを、あまりよく思っていないようだ。
しかし、彼は懸命に母に自分の気持ちを伝えた。
「母上……ほんの短い旅だったけれど、俺は城にたどり着くまでに、連れて来てくれた彼らに多くの経験をさせてもらったんです。世の中の人たちがなにを想い、どういうことをして、どれだけ日々を懸命に生きているのか。ここで行われている政務が、多くの人々のためにある、どれだけ大切で誇らしい仕事なのかを」
(ラルドリス様……)
少し下がったところでそれを見つめながらメルは、脇目も振らず真剣に息子の言葉を聞く、母の姿を見ていた。
きっと彼女はラルドリスの幸せだけを願い、この何事も自由にはままならない宮廷で来る日も来る日もどうすればいいかを悩んだのではないか。もしかしたら,王弟の娘として彼女自身も、長く城に囚われ自由を望んだ時期があったのかもしれない。