助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「ご、御尊顔を拝謁でき、誠に光栄です……。ふ、普段はもっとそれっぽくしているのですが……。ええと、それでは――」
今の彼女は登城するにあたり、フラーゲン邸で使用されている侍女の姿をしているから、そうとは見えないだろう。メルは自分が魔女であるという証明のため、魔法を使って見せることにした。
とはいえ、メルの使う魔法は自然物以外には効果が低い。加工された木材や石床、鉄などはあまり自由に操ることができない。殺伐とした牢の中で命を宿すものは――。
「そうだ、そちらの花瓶に刺さった蘭の蕾を、ひとつ頂けますか?」
「これかしら? こんなものをどうするの?」
正妃から鉄柵ごしにそれを受け取り両手で捧げると、メルは胸の中でまじないを唱える。
(『花の精よ……我が魔力を受け取り、世にも艶やかな姿をここに顕すがいい』)
目を閉じたメルの手が淡く静かに輝き、光がゆっくりと茎の下方から伝ってゆく。
やがて、それが蕾に達すると、見事な大輪の白蘭が花開いた。
今の彼女は登城するにあたり、フラーゲン邸で使用されている侍女の姿をしているから、そうとは見えないだろう。メルは自分が魔女であるという証明のため、魔法を使って見せることにした。
とはいえ、メルの使う魔法は自然物以外には効果が低い。加工された木材や石床、鉄などはあまり自由に操ることができない。殺伐とした牢の中で命を宿すものは――。
「そうだ、そちらの花瓶に刺さった蘭の蕾を、ひとつ頂けますか?」
「これかしら? こんなものをどうするの?」
正妃から鉄柵ごしにそれを受け取り両手で捧げると、メルは胸の中でまじないを唱える。
(『花の精よ……我が魔力を受け取り、世にも艶やかな姿をここに顕すがいい』)
目を閉じたメルの手が淡く静かに輝き、光がゆっくりと茎の下方から伝ってゆく。
やがて、それが蕾に達すると、見事な大輪の白蘭が花開いた。