助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「まあ、なんて素敵な一輪。まるで、内側から輝いているようだわ!」
「魔力を分け与えましたから、そのまま一月は元気でいると思いますよ。さあ、どうぞ」
「ありがとう……」

 ジェナはその花を嬉しそうに花瓶に戻すと、興味深そうにメルを見た。

「魔法を使う方には、私も初めて出会ったわ」
「ね、凄いでしょう? それだけではなく、こいつは俺の友人一号なんです! こう見えて中々頭もよく、勇気もあって、なにより信用できる自慢の友達だ。今回の旅で得た一番の収穫ですね」
「こう見えてっていうのは、どうなんですか? なんかひっかかるんですけど……」
「褒めてるのに揚げ足取るなよな」
「あらあら、本当に仲がいいのね」

 母親の前だというのについつい咎め合うふたりに、ジェナは嬉しそうにくすくすと笑う。そうしていると、貴婦人よりぐっと少女めいた印象になる。
 メルはなんだか女っ気のない自分が恥ずかしくなった。
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