助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね


「すまんな、少し邪魔する」
「で、殿下……! このようなところにようこそおいでくださいました」

 ここは城内の備品倉庫。王城の調度品を管理する、多くの使用人で賑わっている。
 かつてティーラと共にジェナの世話を務めた宮女ふたりの居場所を知ると、ラルドリスは、まっすぐにそこに足を向けた。
 そして多くの使用人たちから物珍し気な視線を向けられつつ、声を潜め彼女たちに話しかける。

「すまないが、少し話を聞きたくてな。時間は取れるか」
「しょ、少々お待ちいただけますでしょうか」

 宮女うちのひとりがごくりと喉を鳴らすと上役に確認しに行き……(いとま)を貰ってきたのだろう、すぐに戻ってくる。
ラルドリスは城内の一室に場所を変え彼女たち――やや年嵩の宮女と、若い宮女のふたりを座らせた。

「俺がなにを聞きに来たのか、わかっているな?」
「……正妃様が関わられた事件のことでしょうか」
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