助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「ど、どうして……シーツが乱れていますの?」
「……今、あなたが触ったんでしょう」
「い、いえ……違います! な、なにか、この部屋にいるの?」
「ちょっと……やめなさいよ気持ち悪い。ひっ!」

 カサカサ……ポリポリポリ。
 木を爪で擦るような不快な音や、なにかを砕くような音を耳にしたふたりはすくみ上がる。よく見ると、吊るしていた絵画もやや曲がり、得体の知れない小さな音が継続的に彼女たちの周りで鳴り続けている。ただただ不気味だ。

「なによこれ……なにか、いる?」

 そこで、窓際からなにかが落下し、静かな部屋にカツーンと高く響いた。

「い、いやぁっ、怖い! 私ここに泊まるのは嫌です!」
「ちょっと、待ちなさいよ!」

 気味の悪さに耐え切れなくなったふたりの宮女は、競うようにその部屋を飛び出してゆった。
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