助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
『――メルや……森と共に在り、森に迷い込んだ者を助けてあげるのが私たち魔女の務めなんだよ』

 祖母は膝の上で抱いたメルによく、そうした魔女としての心得を伝えてくれた。
 ならばそうすべきだ。たったひとり、彼女の教えを受け継いだ者として。

「っは~……」
「なんだ……?」

 メルは一度大きくため息を吐くと、胸の中の臆病を捨て去った。
 そしてしかめ面の顔を上げる。

「仕方ないです。そこまで言うなら、私がその場所まであなたを送り届けましょう」
「無用だ……! 言っただろ、関係ないやつを巻き込むわけには……、つっ、なにをする!」

 青年の口を閉じさせるように、メルは胸に服を押し付けてやった。あんな怪我が一日やそこらで回復するはずがないのだ。やはり、ひとりで行かせるわけにはいかない。
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