助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「おお、なにか聞こえてきた。こ、これはッ……」
やや不明瞭な話し声と共にそこに映ったのは、おそらく正妃ジェナの私室だろうか。昏々と眠る彼女の枕元に、先程の年嵩の宮女と、彼女の側付きであったというティーラ、それから、得体の知れない気配を放つ黒衣の男が佇んでいる。視点はやや低く、おそらく、若い方の宮女の見た記憶を辿っていると思われた。
『やりなさい』
『……』
無言で黒衣の男……おそらくザハールに加担している魔術師は、ジェナに手を翳す。
「いったい、こいつは母上になにを……」
「あの魔物のように、ジェナ様を操り動かそうとしているのです」
きっとそこからなにが放たれたのかラルドリスには見えなかったのだろう。だがあれはおそらく、魔物を造り出す時と同様に集めた、負の思念の集合体だ。それを無防備な状態で注ぎ込まれたジェナは、やがて目を開くと体を起こし、魔術師を見た。焦点が合っておらず、ずいぶんぼんやりとした瞳だ。
やや不明瞭な話し声と共にそこに映ったのは、おそらく正妃ジェナの私室だろうか。昏々と眠る彼女の枕元に、先程の年嵩の宮女と、彼女の側付きであったというティーラ、それから、得体の知れない気配を放つ黒衣の男が佇んでいる。視点はやや低く、おそらく、若い方の宮女の見た記憶を辿っていると思われた。
『やりなさい』
『……』
無言で黒衣の男……おそらくザハールに加担している魔術師は、ジェナに手を翳す。
「いったい、こいつは母上になにを……」
「あの魔物のように、ジェナ様を操り動かそうとしているのです」
きっとそこからなにが放たれたのかラルドリスには見えなかったのだろう。だがあれはおそらく、魔物を造り出す時と同様に集めた、負の思念の集合体だ。それを無防備な状態で注ぎ込まれたジェナは、やがて目を開くと体を起こし、魔術師を見た。焦点が合っておらず、ずいぶんぼんやりとした瞳だ。