助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 いきなり現れた彼は小さくウインクすると、冷静に兵士に説明した。

「ラルドリス様がこの城に戻られる道中、その命は数度に渡り危機に晒されたのです。そのような不逞を働く輩たちが今、この国を支配しようとしている。王都の守りを固める騎士団として、あなた方はそのままでいいと、本気で思いますか?」
「それは……」

 シーベルの問いかけに兵士は苦々しく唇を引き結び、押し黙った。そして……。

「……分かりました。すぐにお持ちします」

 兵士は折れた。彼は奥の保管庫に走ると、そのままひとつの小箱に手に戻ってくる。

「こちらになります」
「助かる。……やはり、間違いないな」
「ええ……」

 そこには、ティーラがジェナに持たせたものと寸分たがわぬ小瓶が入っており、中には濃緑色の液体が揺らいでいる。
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