助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「ではすぐにこれを鑑定に回しましょう。きっと正妃を救う重要な手掛かりになってくれると思います……しかし、よく速やかにこうした考えに辿り着いたものですね。宮女たちが話してくれたのですか?」

 建物を出ながら……その小箱を受け取ったシーベルは、城の医局にて最優先で成分分析をかけることを約束し、ラルドリスは明るい顔で頷く。

「いいや。こいつの発想と、チタのおかげさ」
「ちゃんとお役に立てて、よかったです」
「お前……」

 ほっとしたメルはようやくひとつ肩の荷が下ろすことができ、自然な笑みをラルドリスに向けた。その顔を見て、肩に手をやろうとしていたラルドリスが固まった。それをいったん戻すと、きょろきょろと視線をあちこちに向ける。ほんのり、白い頬に朱が差している。

「あ……う、うむ。おほん、よくやってくれた」
「どうかしたんですか?」

 てっきり一緒に笑ってくれると思ったメルは不思議そうな顔をし、隣で細めを開けてラルドリスを眺めていたシーベルが、茶化すように囁いた。
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