助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「ご心配なさらずとも、あなたをその屋敷に帰るのを見届けたらさっさと戻ります。だから少し準備する時間をください」
「だが……」
「二度は言わないですよ……。見つけたのがもし大狼や熊だったりしたら、あなたは今こうして生きてはいないんです! 拾った命を無駄にして、意地になって、やるべきことを失敗したいなら勝手にすればいい! でもそうでないなら大人しく私に従ってください!」
「ぐっ!?」
 
その綺麗な鼻先に人差し指を突き付けてやる。すると、

「……言ってくれるじゃないか。ならば、大口を叩いた以上、確実に送り届けてもらうからな!」

 やっと青年は納得したか……仏頂面で傍にある薪割り台に腰を落ち着けた。

「少し待っていてくださいね」
「…………」

 無言でいそいそと上着を着込む青年を外に待たせ、メルは家に戻ると旅支度を整えていった。急いでリュックに衣服、食料、薬や役に立ちそうなものを詰め込み、その後漁り始めたのは……台所。
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