助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「あら……なにも警戒することはございませんわ。あなた様とはゆくゆくは縁戚関係になる身として、今後もよりよいご関係を築きたいと」

 ティーラの微笑みからは、何も汲み取れない。まるで分厚い仮面でも貼りつけているような人間味のなさである。

「御免被るな。信用できないやつとつるむ気はない。俺と組みたいならば、ザハールと袂を分けた証拠でも持ってくるがいい」

 もちろんラルドリスには彼女を懐に入れるつもりは毛頭ない。冷淡にあしらいその場から立ち去らせようとする。
 そこで彼女は一枚の封筒をラルドリスに差し出した。

「ザハール様からですわ」
「なんだ? 同じ城にいながらわざわざ手紙だなんて。俺と顔を合わすのが怖いのか?」

 渋々それを手に取るラルドリスに、ティーラは目の奥を光らせて告げた。

「来たる建国記念祭……そこであなたのとの関係に決着をつけたいと、あの方は仰せです」
「……! どういう方法でだ?」
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