助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「そこにはこの国の多くの有力者が出席なさいます。各自演説を行い、より多くの支持者を勝ち取った方が、この国の玉座に座る。それでどうかと、あの方は仰っていました」
「ずいぶんと急な話だな。地方にいる臣民には、それまでにこの地に辿り着けぬ者もいると思うが」
「今回のことはいわばこの先のアルクリフ王国を占う大変な有事です。その場に駆けつけられぬような者など、今後の国政にて要職を担う価値無し、ということでしょう」

 まるで、恐れるものなどないというように、ティーラは次期国王候補の前で何のためらいもなくそう言い切って見せる。
 ラルドリスは迷ったが、シーベルと目線で意思疎通を測ると、果敢に決断した。

「いいだろう。提案に乗ってやると伝えておけ。なにか証拠が必要か?」
「ではその中にある書類に、おふたり直筆のサインを。それで充分ですわ」

 ティーラが持参した封筒の中には、今回の演説によってより多くの支持を得た者が、国王の位を引き継ぐという旨の内容が記してあった。ふたりはそれを詳細に確かめ、用紙の一部を火に当てることさえして見せた。

「用紙に細工してある様子もなさそうですね……」
「ふふふ、用心深いのですね。なにも仕掛けておりませんわ。では、当日を楽しみにしております」
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