助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 そこで、ラルドリスがティーラの手をつかみ、メルを庇った。

「俺の大切な臣下にちょっかいをかけるのはやめてもらおうか」
「あら、私はお話をしてみたいと思っただけですのよ? その娘に興味があって」
「許可しない。母上に付けた宮女たちのように、どんな口車に乗せられるかもわからんからな」
「なんのことやら」

 ティーラは手を引き戻すと、悪意の見えない笑みを浮かべる。しかし、その瞳は相変わらず冷たい。

「どうも、私どもは妙な噂を聞いていまして。妖しい術を使う者が、第二王子殿下についたとね」
「それはそっくりお前たちに返してやろう。人付き合いは考えた方がいいとな」
「っふ……記念日が楽しみですわね。では……」

 それ以上は何も言わず、ティーラは扉の前でもう一度優雅に一礼すると、私室を辞していった。
 ……メルはゆっくりと呼吸を穏やかに戻すと、やっと顔を上げた。

「申し訳ありません。まだ、慣れなくて……」
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