助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 今度は絶対に、彼女から目を逸らさずにいると胸に決め、メルも顔を上げた。

「シーベル、協力者の取りまとめはどうだ?」
「ハッ。軍部から攻撃を受けることはもう無いと思っていいでしょう。モゼウ伯爵がしっかり睨みを聞かせてくれているようですから。国政を司る私も他人の顔色を窺いながら生きたくはありませんし、陰謀渦巻く宮廷などこりごりですよ……。必ずやご期待に応え、心ある人々を御身の前に集わせてみせます、我が主よ」

 いつもながら飄々と答えを返したシーベルが仰々しい礼をし、ふたりを交互に見つめた。

「この三人での行動も大詰めとなりますか……。魔女殿、なにか勝利を願ういいまじないなど、ありませんかね? っとっと」
「チーッ!」
「こいつめ! 自分を忘れるなって言ってんだな。ハハッ」

 メルにしがみ付いていたチタがぴょんぴょんと三人の間を飛び回った後、ラルドリスの頭に陣取った。

「チチュイ!」
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