助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
家長の権限は強く、逆らえなかったのだろう。マリアは想い人を突き放し、家のために城へと入ったという。その時のマリアの心境は、どのようなものだったのだろう……。
「それからすぐだったの。マリア様が身ごもっていることが分かったのは。この事実が共有されたのは、私と陛下とごく一部の高官、後は宮廷医師だけだった。陛下は、その事を明かるみに出さないよう強く言い含め、マリア様のお子を……自分の子として育てるよう命じたの」
そして、ザハールは生まれた。幸い彼はマリアの容色をよく受け継いだから、見た目からその出自が明るみになる恐れはなかった。
「誰からどう伝わったか経緯は分からないわ。数年後、皆がその事実を忘れ去ろうとした頃、彼は――魔術師はふらっと宮廷に現れた。きっと未だにマリア様を愛していたのね。でも……その時にはもう」
ザハールの出自がマリアに強い不安を与え心身を苛んだのか、彼女は幼い子を残して早世した。魔術師は、彼女に会うために来た城のどこかにて、ザハールの姿を見掛けたのだろう。愛した女と生き写しである、息子の姿を。
「それがきっかけだったのでしょう。魔術師は、彼に取り入った臣下に加担し、ザハール殿を影から支援し始めた。自分の息子に父と知られぬまま、王位に着けるために」
「それからすぐだったの。マリア様が身ごもっていることが分かったのは。この事実が共有されたのは、私と陛下とごく一部の高官、後は宮廷医師だけだった。陛下は、その事を明かるみに出さないよう強く言い含め、マリア様のお子を……自分の子として育てるよう命じたの」
そして、ザハールは生まれた。幸い彼はマリアの容色をよく受け継いだから、見た目からその出自が明るみになる恐れはなかった。
「誰からどう伝わったか経緯は分からないわ。数年後、皆がその事実を忘れ去ろうとした頃、彼は――魔術師はふらっと宮廷に現れた。きっと未だにマリア様を愛していたのね。でも……その時にはもう」
ザハールの出自がマリアに強い不安を与え心身を苛んだのか、彼女は幼い子を残して早世した。魔術師は、彼女に会うために来た城のどこかにて、ザハールの姿を見掛けたのだろう。愛した女と生き写しである、息子の姿を。
「それがきっかけだったのでしょう。魔術師は、彼に取り入った臣下に加担し、ザハール殿を影から支援し始めた。自分の息子に父と知られぬまま、王位に着けるために」