助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「よかったんですか? ザハール王子のことを、誰にも伝えないで」
「ん……俺も迷った」
ラルドリスがそれを大々的に発表すれば、それが信じられるかはともかくとして、ザハールの信頼は大きく揺らいだだろう。おそらく、彼が玉座を掴むことは確定的になったのではないかと、メルは思う。
そんなメルの思考を読み取ったように、ラルドリスはしばし瞑目した。
「なんとしてでも、あいつを玉座から引き下ろすためには、そうすべきだったかもしれない。けれどそうなれば、ここまでの意味が……俺が今、多くの人のことを知り、支えてくれる人々を見つけた意味が無くなるような気がしてな。……俺は、自分の力で、あいつにちゃんと勝ちたいと思った。子供じみた理屈で恥ずかしいけど……」
ただ血筋の紡ぐレールに乗っ取っただけでは、ふさわしき者として自分で自分を認められない。青空を向く彼の瞳は、そんな気高さに満ちている。
「いいと思います。あなたらしくて」
だとすれば、メルはそれを全力で支えるだけだ。
「ん……俺も迷った」
ラルドリスがそれを大々的に発表すれば、それが信じられるかはともかくとして、ザハールの信頼は大きく揺らいだだろう。おそらく、彼が玉座を掴むことは確定的になったのではないかと、メルは思う。
そんなメルの思考を読み取ったように、ラルドリスはしばし瞑目した。
「なんとしてでも、あいつを玉座から引き下ろすためには、そうすべきだったかもしれない。けれどそうなれば、ここまでの意味が……俺が今、多くの人のことを知り、支えてくれる人々を見つけた意味が無くなるような気がしてな。……俺は、自分の力で、あいつにちゃんと勝ちたいと思った。子供じみた理屈で恥ずかしいけど……」
ただ血筋の紡ぐレールに乗っ取っただけでは、ふさわしき者として自分で自分を認められない。青空を向く彼の瞳は、そんな気高さに満ちている。
「いいと思います。あなたらしくて」
だとすれば、メルはそれを全力で支えるだけだ。