助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 しかし……じっと見つめたメルにチタはすぐ纏わりついて、何度下ろしても離れようとしない。困った彼女はチタをそっと両手で掴むと、強く言い聞かせる。

「だーめ。これから、人間がいっぱいいる怖いところに行かないといけないんだよ。ちっちゃいチタなんか、おやつ代わりにぱくっと食べられちゃうかもしれないんだから。がお~」
「チーチー」

 かぱっと口を開け、肉食獣の真似をして見せても、チタは怯まずリュックのポケットに入り込む。

「どうしても行きたいの? もう、仕方ないなぁ……」

 結局メルは彼のしたいように任せ、やれやれと玄関を閉めて小屋を振り返った。
 鍵は掛けずともいいだろう。こんなところまでやってくる人はほとんどいないし、万一誰かに入られたって、メル以外にはさして価値のない物しか置いていないのだから。

「行ってきます」
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