助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「これが終わったら、話したいことがあるから」

 それだけ言い、彼は前へ。しっかりと自信の感じられる足音が、遠ざかっていく。

(話したいことって、なんだろ……。御身をお守りしたご褒美、とか……? いや、反対にこれまでの無礼のツケを……。それはないか、友達だって言ってくれたんだものね……)
「さて……メルと言ったかしらね。場違い者の、田舎娘」

 ……ラルドリスの後ろ姿を見ながら浮かべた色々な想像を、つららのような冷たい言葉が裂いて破った。

「あなたが……彼の魔物を倒したのよね?」

 メルは戦いを始める覚悟を決めると、ゆっくりと後ろを振り向く。

「……ラルドリス様に手を出すのは、もう止めてください、お姉様」

 そこで初めて、ティーラがわずかな動揺を示す。その視線が頭の中を探るようにくるくると動き、驚嘆のため息が漏れる。
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