助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 思った通りの生き方ができる人間なんて、そうはいない。
 それを思うがまま、すべてを操り神の様に生きれたなら、それはきっととても胸がすくような、またとないものになるのだろう。

「――お姉様、私は」
「メルローゼ! 来なさい、こちら側へ!」

 ティーラの指先がさらにふたりの間の距離を埋める。
 それが近付き、かつての妹の身体にまさに、触れんとした時。

「……嫌です!」

 ――パシン……と大きな音を立て、メルはそれを大きく振り払った。
 そして、自分の意思で告げる――完全な決別を。

「あの時、私は死ぬような思いをしました……ナセラ森の優しい魔女が助けてくれなければ、今こうしてお姉様と再び会うことはなかったでしょう。けれど、そんなことはもういいんです……。ただ……」
< 290 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop