助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 メルは身体の震えを止めると、ティーラをしっかと見据え……。

「ラルドリス様を――私の大切な人を害そうとするあなたを放ってはおけない! たとえ、本当の家族でも! 私はあなたと戦います!」

 全力の声を絞り出し、ティーラにぶつけた。

「……そう」

 対して、ティーラの反応は小さかった。すっと手を下ろすと、一歩、一歩と後退し、表情を消す。

「残念だわ。実は私にもほんの少しの良心の呵責というのはあってね……本当よ? だけれど、それは目的と秤にかけるまでもないもの。いいわ……。ならば、ここであの王子ととともに、幕を下ろして差し上げましょう? 魔女メル・クロニア殿?」

 そして入れ替わるように、暗がりに溶け込んだように動かない魔術師の後ろまで下がった。

「後はお前に任せるわ。彼女の決意は固いみたいよ……ラルドリスを殺し、あなたの息子を王にするためには、確実に、先に始末するしかないわ」
「――――!!」
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