助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「……邪魔だ」
「くっ……」

 いくつも立て続けに放たれるそれを防ぐたび、メルの前の水のカーテンは薄く、狭いものになってゆく。
 メルは歯噛みした。ここが森の中であれば……大地や木々の力を大きく借りて戦うことができるだろうに、地の利がない。一方魔術師の使う魔法は、かなりの人数の人が城内に集まっているせいで、大きく力を増している。

「『芽吹く生命は籠目を作り、戦士に憩いの仮宿を与えたもうた』!」

 一旦水のカーテンを消すと、メルは床に小さな種をいくつもばらまいた。それは蔦を伸ばして巨大な網籠を作り、なんとか魔術師からくる第二陣の猛攻を防ぎ止める。

「本当に、魔法などというものを使うのね……。でも、そうしてただ防いでいるだけでは、なんにもならないのでは、魔女殿?」

 ティーラの嘲笑が響く。
 魔術師は攻撃の手を緩めようとせず、こちらの防御を削って来る。
 悔しいが、確かにこうして持ち球を消費しているだけでは、勝機はない。
< 293 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop