助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 両手を下げ、ゆっくりと沈むメルの耳の奥に……少しだけ、声が届いた。

『限りある人生だが……これからも共に――』

 これからも……共に。

(そうだ……終わったら、話したいことがあるって)

 彼は、メルが戻らなければ、悲しんでくれるだろうか。

(それは……やだな)

 そういえば、ラルドリスが涙を流すところは見たことが無い。少し我儘で非常識で、実は結構寂しがり屋なくせよく意地を張る、子供みたいな人。でも根は明るくて、とてもいい笑顔で笑うところをたくさん見せてくれた。

(笑っていて、欲しいな……)
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