助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「よい……しょっと。ではあなたは……私の後ろに乗っていただけますか?」

 メルは身軽に(あぶみ)を踏んで背中に上がると、青年に手を差し出す。

「これは見事だ。ナスがまさか、馬になるとはな……! 若いからってあんたを見くびっていたことを詫びよう」

 彼はおそるおそるメルの手を取ると、大人しく後ろに跨り、感触を確かめた。
 乗馬は久々だけれど、魔法の馬はメルの言うことをよく聞いてくれるはずだから、なんとかなるはずだ。

「では、参りましょう。とりあえずここから最寄り街サンチノまで出ますので、そこに着いたら以降はあなたの指示で動くとします」
「ラルドリス」

 ぶっきらぼうな声で青年が呟き、メルはぱちくりと目を動かす。
 それも気にせず青年は遠慮なく腰に手を回した。

「短い付き合いになるだろうが、名前だけは伝えておく。よろしく頼む」
「ラルドリス……様ですね。ならば私も名前を――」
「――メル」
「えっ」
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