助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「きっと……その人はきっと、お金以外のものをあなたに与えてくれたのね」
「はい。自慢の祖母でした。少し前に亡くなりましたけど……彼女のことは、これからもずっと憶えています」
「……マーティル家に、あなたのことを伝える必要はなさそうね?」

 小首を傾げ、姉が聞いた言葉にメルは頷いた。

「はい……私にはもう、帰る場所がありますから」
「そう」

 さして興味が無さそうにティーラは苦笑すると、メルに言った。

「ごめんなさいは言わないわ。ひどい姉ではあったけれど、私は、私の人生に後悔していないから。だからあなたも、私や家を許す必要はない。なにが起きても、気に病むことはない」
「はい」

 それは淡々とした受け答えだったが、妙に息が合っていたような気がする。

「――メル……無事だったか!」
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