助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 起床し身なりを整えたラルドリスが、忙しい朝でも食事をを共に取るくらいは許されるだろうと、メルの部屋を尋ねた。
 すると、そこにはシーベルとボルドフの姿がある。

「殿下、おはようございます」
「ああ、おはよう。お前たちがこんなところにいるとは珍しいな。丁度いい。メルと一緒に朝食をと思っていたんだが、お前たちも――」
「こちらを」

 無骨な老兵が手ずから渡したのは、簡素な一枚の封筒だった。

「誰からの手紙だ? まあ、食事の後でゆっくり――」

 そこで、封筒の上に走る差出人の名前を見て、

「メルッ!」

 ラルドリスは勢いよく、メルがいるはずの部屋の扉を開け放った。
< 344 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop