助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 街で暮らす人々にも、明るい顔が増えたように思う。

「ああ、こんなに嬉しいことはない。ようやく俺は、俺の目指す国の姿が朧気にだがみえるところまでやってこれた。そんな気がしてる」

 ラルドリスの情熱的な瞳が潤んでいて、メルも頬に血が上がるのを感じた。
 きっと、侮られがちな若い王が、多くの人の信頼を得るには言い尽くせないほど大変な困難を負ったはず。しかしそれを、ラルドリスは仲間たちの力を借りて見事、跳ね除けて見せた。彼のここまでの努力が報われたことが、メルにとってなによりの朗報だ。
 こうしてそれを伝えに来てくれた彼に、メルとしてもできる限りのもてなしをしてあげたい。素直にそう思えた。

「あの……今日は長く居られるんですか? お口に合うかわかりませんけど、よかったら一緒に食事でも。お、王様に振る舞うなんて、私などでは不相応でしょうけど……」
「ああ、もちろんだ。久しぶりに時間をもらったからな。今頃シーベルはひいひい言ってるだろうが」

 へらへら笑いを引きつらせてそうなシーベルに同情しつつの心ばかりの提案を……彼は快く受け入れてくれた。メルは弾む気持ちで、再び家の扉を開けようとする。
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