助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「ちょっと待った、それで終わりじゃない。そのことよりも、大事な話があるんだ」
「は、はぁ」

 ラルドリスの成功よりも大事な話など、他にあるのだろうか?
 腕を引かれ、くりんと反転させられたメルは、背中を押され、馬車の前に連れてこられる。

「俺もいい年だしな。そろそろ結婚って奴をしようと思うんだ」
「……そ、それは。ええ……とっても、素敵な事です!」

  あれからもう五年程は経ち、彼との出会いはいわば過去のこと。今やラルドリスは確か二十二……十分に適齢期に達している。ならばなにもおかしくはない。
 メルは反応には困ったが、なんとか、笑顔を浮かべることができた。
 では、もしかしてこの中にそのお相手が……?

「開けてみてくれ」

 メルはわずかに胸を痛めながらも深く息を吸い、未来のお妃さまにご挨拶しようと息を整える。
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