助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 そして、ゆっくりと、そのドアを開けた。

 瞬間、きらびやかな装飾品群と、いくつもの素晴らしいオーダーメイドのドレスが、目に飛び込んでくる。

「あれっ?」

 しかし、中には誰もいない。
 メルは一旦入り込んで中を見回すと、戻ってきて首を傾げた。

「お妃さまはいずこへ?」
「いるじゃないか。俺の目の前に」

 くるり、くるりと首を捻るが、他にあるのは二頭の馬の姿だけ。メルはぐしぐしとまぶたをこする。

「おかしいな。あの……もしかして、私たちが話している間に、退屈で森にお散歩にでも……?」
「いい加減に、現実を直視しろ」
「……はい?」
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