助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 それでもなお、瞬きをして意図を測りかねていたメルに、ラルドリスは告げた。

「車の中のものは、全部お前のものだ。……俺と結婚してくれ、メル」
「…………え~と」

 思考が退化したかのように、メルは口をぽかんと開けたまま疑問を繰り返す。

「久しぶりに会えたおかげで、頭がおかしくなってるみたいです。もう一度言ってもらえますか?」
「俺と結婚して、王妃になってもらう。お前に」

 なにを言っているんだろうか、この人はと。
 メルの頭は、彼の言葉を反芻した。何度も、何度も。
 だが、それは何十週しても、同じ結果をメルに突きつけて。
 ようやく言葉の意味を理解した彼女は、自分の顔を指差した。

「私が、あなたの妻に?」
「そうだ」
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