助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
二十半ばほどに見える、端正な顔立ちの男性だ。
紺色の長い髪を後ろで結び、顔の中央では、ほぼ黒の切れ長の目が利発そうに光る。
背はラルドリスよりも頭半分高く、体格もよいが、武官よりはどちらかというと文官という印象の知的な雰囲気の人であった。
しかしそんな彼も、王子様を置物のように膝に鎮座させるメルの姿には唖然とする。
「ご、ご機嫌麗しゅう……」
メルとしては、蚊の鳴くような声でかろうじて言えたのはそれだけ。
相変わらずぐっすりと眠るラルドリスは、まるで意識を取り戻す様子はない。柔らかい生地の黒ローブの上はそんなに寝心地がよいのか。
「でん、か…………ッ」
現れた男性の肩が震えた。
(ま、まずいかも……)
慌てて脱いだ帽子を右に左に持ち替えメルは混乱する。にっちもさっちもいかず、彼の耳にでも噛みついて起こしてやろうかと思ったその時――目の前で男性の口が大きく開き……。
紺色の長い髪を後ろで結び、顔の中央では、ほぼ黒の切れ長の目が利発そうに光る。
背はラルドリスよりも頭半分高く、体格もよいが、武官よりはどちらかというと文官という印象の知的な雰囲気の人であった。
しかしそんな彼も、王子様を置物のように膝に鎮座させるメルの姿には唖然とする。
「ご、ご機嫌麗しゅう……」
メルとしては、蚊の鳴くような声でかろうじて言えたのはそれだけ。
相変わらずぐっすりと眠るラルドリスは、まるで意識を取り戻す様子はない。柔らかい生地の黒ローブの上はそんなに寝心地がよいのか。
「でん、か…………ッ」
現れた男性の肩が震えた。
(ま、まずいかも……)
慌てて脱いだ帽子を右に左に持ち替えメルは混乱する。にっちもさっちもいかず、彼の耳にでも噛みついて起こしてやろうかと思ったその時――目の前で男性の口が大きく開き……。