助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 ラルドリスが、その表面を撫でると、役目を終えたかのように向日葵は萎れ、種を地面に落としていった。

「……チチッチュ!」
「あっお前! ったく、丁度いいところに出てくるよな、いつも」

 そこへいつの間に帰って来たチタが嬉々として、頬袋にそれらを詰め込んでゆく。
 他にも小鳥たちが囀りながら地面を突き、途端に賑やかになった。

「思ったよりも、寂しくないものかもしれないな。この世界は」

 ラルドリスはしばし目を閉じると、自然の音に耳を澄ます。
 地面の種を集めていたメルも、そうしてみる。

(お婆ちゃん……私は、あなたに少しでも近づけていますか?)

 心の中に浮かべた疑問に、答える声はもちろんないけれど……。
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