助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 おかげで、次代の王について臣下の意見は二分している。
 長子こそがこの王国を率いるにふさわしいというザハール派。
 正室の子以外は嫡子として認められないというラルドリス派。

 もはや王の命の灯は幾ばくもなく、早急にどちらが次の王位を継ぐのか、決めなければならないというのに……。

「どちらが正当な王太子であるかという、そんな争いがこの国で起こっていたんですね……」
「そう。そして城を去ってもなお殿下の支持は根強く、ザハール王子の立場は盤石とならなかった。今回のことはそれを危惧した彼が、配下の兵を放って殿下の命を奪い、自身の継承権を確固たるものにしようとしたことで起きたようです」
「そんな……」

 正直、メルにはぴんと来ない。話が大きすぎるし、第一森に棲み世俗と関わらない彼女には誰が王になろうとあまり関係がない。侯爵家にいた頃ならいざ知らず、今の彼女には、立場の方が命より大事などと言う考えはどうにも理解しがたい。
 メルは疲労の滲むラルドリスの寝顔を見ながらぽつりと呟いた。

「どうしてなんです……。ラルドリス様がこうして意思を表明している以上、彼の側に着いた方々だけが異を唱えても……仕方のないことではないのですか?」
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