助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「そうはいかないのですよ。臣下たちからしてみれば、どちらが次の王に立つかで、自分たちの処遇も大きく変わってくるのですから。事はもはや、彼の一存では決められないのです」
「――加えて……兄上はどうしても、俺を排除しなければ気が済まないらしい」
「わぁっ!?」

 ぱちりと……、目の前で大きな朱色の目が開き、思わず仰け反るメル。
 それも気にせずラルドリスは体を起こした後、左右を見渡しすぐに状況を把握した。

「少し寝ていたようだな……」
「殿下、よくぞご無事で」
「……シーベル、すまん。お前の配下たちを巻き込み、命を散らせてしまった。皆私を庇って勇敢に戦ってくれたのだ。ナセラ森付近を探してくれ、まだ生き残りがいるかもしれん」
「すでに手配させております。引き続き捜索させましょう」
「頼む」

 殊勝に頭を下げると、彼は強く拳で膝を打ち付けた。

「くそっ! 誰が王になるかなど……どうでもいい。だが、兄上には……いや、ザハールの思い通りにはさせるものか! 母上を人質にしてまで俺をおびき寄せ、殺そうとするなど!」
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