助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
(家族……か)

 メルにとって、血が繋がっていようといなかろうと、本当の家族と思えるのは祖母だけだ。
 あの侯爵家で、父母は優秀な姉と違ってメルにほとんど構ってくれなかった。かろうじて姉だけが、自分に家族としての関わりを与えてくれていたものの、今から思えばそれはできのいい長女を演じ、将来を有利に進めるためのポーズだったのだろう。邪魔だと判断された途端、切り捨てられたのだから。

 しかし、唯一心を預けることが出来た祖母も、メルが気持ちの準備もできないまま天国へと旅立ってしまった。
 今もこうしていてどこか、胸の中にぽっかり開いた空洞のようなものを感じる。どうしようもないやるせなさが胸の中に居座っていて……いつ消えるのか見当もつかない。

 自分が一人前になるまで祖母が生きていてくれればと、何度思ったことか。
 どんな終わり方が理想だったのかなんていうのは分からないけど……メルは見せたかったのだ。自分がちゃんと祖母の後を継いで誰かを助けるところを。
 せめてメルだけは……あの時くれた優しさが間違いでなかったのだと祖母を肯定し、少しでも彼女を満足させた上で逝かせてあげたかった。
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