助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 血の繋がりがどうとかではなく、できることは何でもしてあげたい……家族とはそんな存在だとメルは思う。仮に祖母の命を救う手段があったなら、メルだって、なにを置いてもあの小さな家を飛び出しただろう。それを思うと……。
 苦しさに、自分の服の胸元をぎゅっと掴む。

(駄目だ……私、このまま森へ帰れないや。ここで彼を見捨てたら、それこそおばあちゃんに、胸を張って報告できない)

 彼らを案じるわけではなく――亡くなった祖母への手向けをしてやれなかった償いのため。
 ただの自己欺瞞だと分かっていながら、どうしても見て見ぬ振りはできず……メルは彼らの事情に首を突っ込むことを決意した。

「あのっ……! 私に、お手伝いさせていただけませんか!? ナセラ森の魔女の名前を継ぐ者として……目の前で困っているあなた方のことを放ってはおけない……。魔術には魔法……。兄君についている魔術師から、私ならラルドリス様をお守りできるかもしれません!」
「誠か!?」

 ラルドリスの瞳が真っ直ぐにこちらへと向いた。その純粋さがどうも後ろめたく、メルは視線を絨毯の上に落としながら答えた。
< 50 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop