助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「よいのか?」
「領地のことなら心配ご無用、優秀な配下がおりますれば。しかしそれより……あなた様の動向が向こうにも知れていたことが問題です。近辺に潜んだ間者を欺くには……できる限り目立たぬよう、迅速に発つ必要があるでしょう」

 声を潜めて言う彼に、ラルドリスとメルも同意する。

「そうだな。城にまで顔を出せば、おいそれと俺を害することはできまい。まずは道中を乗り切ろう……。その後はどうすればいい?」
「王都にも我々に協調してくれる者はおります。私が書簡を送り、ラルドリス派の手を借りてザハール様を糾弾する手配を整えておきましょう」
「頼む。……本当は、お前のような男が玉座に座るべきなのであろうな」

 じっと問いたげな目で見たラルドリスに目を細め、シーベルは一笑に付した。

「はは……私のような(さか)しき者、器ではありませんよ。さあ、早速ですが魔女殿も作戦にご協力下さい。まず第一、その恰好ではちと目立ち過ぎる。王子のお傍にいるのであれば、少しばかりらしくしていただきませんと。お前たち――」
「えっ? ちょ、ちょっと……」
< 52 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop