助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

フラーゲン公爵③

 それから一日と少しが経ち……。
 メルはしっかり時間をかけてフラーゲン公爵家の侍女たちに身体を磨かれ、髪にも手入れ油を塗りこまれたりして徹底的に身綺麗にされた。
 睡眠時間を除いて淑女の心得を骨の髄まで叩きこまれ、また幼い頃の記憶を引っ張り出して……翌々日の明け方、再びラルドリスとシーベルの元へ姿を現す。

「……ここまでする必要、ありました?」
「うん、まあまあ見られるようになった。これならば、連れ歩いても悪目立ちはすまい」

 教えられたとおりに目の前でカーテシーをして見せるメルに、ラルドリスはきょろきょろと無遠慮な視線を向けた後、鷹揚に頷く。

「そんな言い方は失礼ですよ殿下。女性の身なりについてはいつ、いかなる時にでも美点を見つけ褒めてやらねば。それが男としての務めです」
「そうなのか? まあ、あの黒ローブは柔らかくて寝心地がよかったがな」
(人をクッションみたいに……! ったく……どうせ私は化粧もまともに知らない野暮ったい女ですよ)
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