助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「出発します! イヤッ……」

 鞭の打擲音を合図とし、カラカラと勢いよく車輪が回り出す。
 闇と大地の境目が白く滲むようにようやく別れ始め、不明瞭な視界の中……三人を乗せた馬車は次第に速度を上げてゆく。

 本当に自分たちは目的地へ無事辿り着けるのだろうか。頼りない気持ちを拭いきれず、メルは周りの景色が晴れるまで、進む道の奥を真っ直ぐに睨んでいた。
< 59 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop