助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 生の食材を見たことがなかったのか愕然とし、見慣れない食べ物をひっくり返しては子細に眺め出すラルドリス。それを見ていると先程の疑念も晴れ……メルの胸にはようやく落ち着きが戻ってくる。
 興味津々の彼に笑いを噛み殺しつつ、時に鋭く不手際を指摘してやった。



「――チタ、ほら、クルミを割ってあげたよ」
「チュッ!」

 そして、数十分後。
 三人と一匹は馬車の車内で向かい合って食事をとり始める。
 塩漬け肉と野草、キノコ入りのスープは調味料でそれなりの味に整った。
 固いクラッカーもこれに浸したりすれば、そこそこ満足感を味わえる。

「意外と難しいものなのだなぁ、料理とは」
「そうでしょう。指を切ったりはしませんでしたか?」
「ああ、大丈夫だ」
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