助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「え、ええ。それは色々ありましたよ。大風とか、ひどいのだと山火事が起きて……おばあちゃんが雨を呼んでなんとかしてくれましたけど、あの時はしばらくは辺りから焦げ臭さが消えませんでしたね……」
あの小屋は比較的開けた場所に建てられていたが、それでもシーベルの言う通り、大雨で川が氾濫したら水は汲めないし、こないだみたいに家が壊れることだってあった。大自然から汲み取れるのは恩恵だけではなく、裏に等量の災いも存在する。
シーベルはうんうんと頷くと、遠い昔に思いを馳せるように目を細めた。
「長い歴史の中でひとつずつ……かつての人は自分たちが生きやすいように暮らし方を変えていったんでしょう。大勢が集まった方が効率的に生活できると分かり、集団は村へ、そして街、国へと次第に発展した。しかし……どうしてですかねぇ。私もありますよ、たまに俗世から離れ、何も考えず日がな一日一人で過ごせればと思う時が」
「たまにならいいですが……毎日は寂しいですよ」
ついぽろっと出たそんな一言にふたりの視線がこちらを向いたので、メルは慌てて言い訳するように手を振った。
「あ、ええと……それにやっぱり、た、頼る人がいないのは本当に大変ですから! 病気になっても、介抱してくれる人はいませんし! 愚痴を呟いたって、誰も相槌なんて打ってくれないですし……。ねっ!」
あの小屋は比較的開けた場所に建てられていたが、それでもシーベルの言う通り、大雨で川が氾濫したら水は汲めないし、こないだみたいに家が壊れることだってあった。大自然から汲み取れるのは恩恵だけではなく、裏に等量の災いも存在する。
シーベルはうんうんと頷くと、遠い昔に思いを馳せるように目を細めた。
「長い歴史の中でひとつずつ……かつての人は自分たちが生きやすいように暮らし方を変えていったんでしょう。大勢が集まった方が効率的に生活できると分かり、集団は村へ、そして街、国へと次第に発展した。しかし……どうしてですかねぇ。私もありますよ、たまに俗世から離れ、何も考えず日がな一日一人で過ごせればと思う時が」
「たまにならいいですが……毎日は寂しいですよ」
ついぽろっと出たそんな一言にふたりの視線がこちらを向いたので、メルは慌てて言い訳するように手を振った。
「あ、ええと……それにやっぱり、た、頼る人がいないのは本当に大変ですから! 病気になっても、介抱してくれる人はいませんし! 愚痴を呟いたって、誰も相槌なんて打ってくれないですし……。ねっ!」