助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 彼は肩を竦めると自虐気味にくすりと笑う。

「母や、たまに来るシーベルだけが唯一俺の相手をまともにしてくれたが、次第に俺もそれが普通なのだと慣れてしまってな。こんな馬鹿の出来上がりさ。正直、どのような態度でいればいいか、まるでわからんのだ……」
「ラルドリス様……」

 メルはその話を聞いて、城には彼を王子としてではなく、ラルドリス個人として見てくれる人物がほとんどいなかったのだと思わされた。
 彼がシーベルの屋敷に移ってからそんなに時間は立っていないのだろう、外に出た時の振る舞いに悩んでいるのはわかった。せめて、彼が城に戻るまでの間は、周りにいる自分たちだけでも気を付けてやらないと。
 だが、ラルドリスはふとこちらに顔を向け微笑む。

「でもな、やはり外は面白いよ。俺が王子だと分かって、お前みたいに叱ってくれるやつはこれまでいなかったんだぞ?」
「それは……出会い方が出会い方でしたし、外では普通のことです。いけないことをしたら、叱るんです」

 その嬉しそうな顔を見ていると、少し恥ずかしくなって……メルは顰め面をして見せたが、それが逆にラルドリスの笑いを誘ったようで、彼は喉の奥をくつくつ鳴らした。
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