助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「勘、ですかね。魔女としての」
「……はははっ。なんだそれ」

 つい思い付きで返したメルに、ラルドリスはというと膝を叩いて大きく口を開け、笑う。
 そんなにおかしかったかなと思いながら、その明け透けな笑顔にメルも口元をほころばせる。ラルドリスは笑みを残した表情のまま、メルに尋ねた。

「お前、このことが終わったら、俺に仕えるか」
「え?」

 突然のことで、意図かが分からず動揺し、聞き返そうとしたメルにラルドリスが答えようとした時だった……。

「ヂィッ!」
「チタ!?」

 いつの間にかメルの肩につかまり、後ろを向いていたチタが鋭い声を発して後ろへ跳ぶ。
 特に彼を刺激するようなことはしていないかったはずだが、どうやらその原因は別にあったようで、チタは素早く馬車内を走って後部座席に登り、出入り口に取り付けられた窓を覗いて毛を逆立てている。
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