助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
(どうにかしないと……!)

 手をこまねいているわけにもいかず、メルは荷台に置いていた鞄から、一枚の色鮮やかな緑の羽根を取り出した。これは祖母の家に会った貴重なものだし、あまり魔法を人に向けたくは無いけれど……こちらも命が懸かっている。

「メル殿、危ないですよ!?」
「『ケツァールの尾羽よ! 輝く風の記憶を、一時この場に顕したまえ』!」

 シーベルの制止をふりきり、メルは一瞬の隙を突いて幌から顔を出すと、大きくその羽を掲げた。

「これは……魔法!?」

 目を向いたシーベルの視線の先でそれはきらきらした光の粒子を放ち、一瞬後、後方へ強い旋風が巻き起こった。

「う、うわっぷ! 急に風がっ!?」
「ぐう、体勢を低くしろ! 馬にしがみ付けっ!」
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