助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「ご苦労様でした……まさか魔法で風を起こして見せるとは、驚きましたよ」
「お役に立ててなによりです」

 彼とほっとした顔を見合わせていると、魔法を解除したメルの手から、羽が緑風となって空気に解けてゆく。本当に生きた心地がしなかった。だがこれでひとまずの危機は去った。

 シーベルはラルドリスから手綱を受け取ろうと御者台へと戻り、メルもそれに続く。
 追手が消えたことを察したラルドリスがこちらに明るい顔を向けてきた。

「お、上手く片付けたようだな。俺もようやく慣れてきたところだ」
「それはようございました。練習がてら、このまま道なりに進んでください。しかし……」

シーベルからは難しい表情が消えていない。

「困りましたねぇ。先ほど後ろの方から煙が上がるのが見えた。あれは目標を発見せりという知らせです。恐らくこの先でも、王国兵たちが捜索の網を広げ待ち受けていることでしょう」
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