復讐は恋を妨げる
第二話 屈辱には復讐を
〇披露宴会場の外・待合室
披露宴会場から出て、椅子に座る結奈、岬。
結奈、岬の正体がわからず、警戒している。
岬「兄貴も最低だよなー。婚約者が目を覚まさないかもしれない。ってなったら、すぐに切り替えたもんな」
結奈「……兄貴?」
岬「あんな紳士そうな顔しちゃってさー。腹黒なんだから」
岬のことが誰なのかわからず、考える結奈。
岬「覚えてない? お姉さん♡ あ、もうお姉さんじゃないか。捨てられちゃったから」
結奈「あっ、司の弟の……」
岬のことを思い出す結奈。
婚約者の時に、一度だけ挨拶をしたことがあった。(思い出す一コマ)
岬「ねえ、お姉さん? 捨てられて、若い女に取られて悔しくない?」
結奈「……それは、」
岬「あいつらに、その屈辱をやり返すってのはどうよ?」
結奈「そんなこと……」
結奈(確かに、この感情の行き場はない。だけど……やり返すだなんて)
岬「俺、嫌いなんだ。兄貴が。優等生で、誰にでも優しくて。人生イージーモードでさ。現に裏ではこんなあくどいことしてんのに、おとがめなしなんて……どうよ?」
結奈「実の兄だよね?」
岬「そうだよ。正真正銘の血のつながった兄貴だよ。だけど、片方は次期社長の副社長。なのに片方は、ちゃらちゃらしてるとか、煙たがられる存在のぼく♡」
結奈(弟のことは、甘ったれで、責任感がまるでないって、司が言っていたような)
岬「だから、奪っちゃおうよ? 会社での地位も。あのみんなから浴びているまなざしの輝く場所も」
披露宴会場に顔を向ける岬。
盛り上がる披露宴会場の絵。幸せそうに微笑み合う司と美香。
結奈「奪うなんて……何言ってるんですか! もう、帰ります!」
岬の話を中断させ、怒って帰る結奈。
一人取り残される岬、軽く笑っている。
岬「あらら。怒っちゃった……って、何処に帰るんだろ?」
〇結奈と司が住んでいたマンション・現在は司と美香の住まい
マンションのエントランス。
現在は司と美香の住まい。
知らない結奈は、自分の家だと疑うことはない。
結奈(何かの間違いだよ。こんなはずない……)
ふらふらとマンションに帰る結奈。
エントランスの鍵を開けようとするも苦戦する。
結奈「あ、あれ。鍵が開かない。なんで……」
非接触キーが反応せず、鍵が開かない。
他の住人も帰ってきて、鍵を開けられない結奈を不審な目で見る。
視線にも気づいて、焦る結奈。
何度も鍵を試す結奈。涙を浮かべる。
結奈「お願いだから……開いてよ。私たちの家なのに」
困り果てながらも、意地で諦めない結奈。
岬「こんなことだと思ったよ。いい加減受け入れろよ。現実を」
必死に何度も鍵を試す結奈の腕を掴んで静止させる岬。
岬を涙目で見上げる結奈。
結奈「……っ」
岬「この家もあの女と住んでるんだよ。鍵も変えたんだろうよ」
結奈「そんな! この家は私と司の……」
一緒に仲良く住んでいたころの思い出の絵。
岬「お前は……捨てられたんだよ。司は、あの男は……事故に遭って意識不明の婚約者を捨てて、乗り換えたんだよ!」
認めたくなかった現実を突きつけらる結奈。
こらえていた涙を流す。
岬「こんなところで泣くなよ……」
ちょうどマンションに帰ってくる住人がちらほらといる。
結奈「こんな状況で泣かない人がいるならっ……うっ、教えてほしいよ」
岬「……」
結奈「交通事故に遭って、昏睡状態で……目覚めたら、婚約者が会社の後輩と結婚してて……。こんなの世界一不幸じゃん。私より不幸な人連れてきてよ」
号泣しながら、岬に八つ当たりする結奈。
岬、泣いてる結奈の顔をグイっと上げる。
岬「だったら、復讐すればいい。俺と一緒に」
結奈「復讐なんて……」
ふらりと体が揺れる結奈。
ずっと寝たきりだった結奈、身体に限界がくる。
岬「……っと、危ない」
倒れる前に結奈を支える岬。
岬「とりあえず、病院戻るか……どうせ抜け出してきたんだろ?」
結奈「……戻りたくない」
岬「だめだ。戻れ。身体ふらふらだろ」
結奈「だって、今日一人になったら、辛くてどうにかなってしまいそう」
泣きながら俯く結奈。
結奈をじっと見つめて考える岬。
岬「だったら、俺が連れて帰ってやる」
結奈の体をお姫様抱っこする岬。
結奈「え、ちょっと……」
岬「ここでいくら待っても、お前が待つあいつは現れない。現れるのは、結婚式を終えて幸せな顔で笑ってる男と女だけだ」
結奈「……」
岬「別に手を出したりなんてしない。俺はお前を利用するだけ。だからお前も俺を利用すればいい」
見つめ合う結奈、岬のアップ絵。